有機栽培の課題・自然栽培の課題

2015.6.28

「有機栽培の課題」

 有機栽培の課題としては、有機JASという法的な定義及び規格が決められてはいますが、ヨーロッパやアメリカのオーガニックに比べてその基準にかなり曖昧な点があるということです。

誤解されている方も多いのですが、有機栽培=無農薬ではありません。有機JASでは約30種類の農薬の使用が認められており、使用制限もありません。その為規格が決められていても、その基準さえクリアすれば農薬を一切使わなくても、指定の農薬をいくら使っていても、「有機栽培」というくくりとなってしまうため差別化がしにくい(労力やコストが価格として反映しにくい)といった問題が出てきます。

また、特に大きな課題として肥料の使用制限や規制がない事があげられます。 

 有機肥料(特に動物性肥料)の与えすぎは、肥料元となる家畜のエサや硝酸態窒素(硝酸塩)によって人体への悪影響や環境汚染の原因となり得るため問題となっています。

有機肥料は現行のJAS法では、家畜の糞尿を発酵させてつくる「動物性肥料」と草を発酵させた堆肥、米ぬかなどから作られる『植物性肥料』のふたつに大別されます。

 この有機肥料の中でもっとも多く使われているのは牛糞由来の動物性肥料ですが、日本の家畜飼料の約7割は輸入飼料で、ポストハーベスト(収穫後の作物に直接散布される)を含む農薬汚染や遺伝子組換えといった問題があります。さらに、飼育時に抗生物質やホルモン剤といった薬剤も使われており、それらを無害化して肥料とするには本来数年の月日が必要ですが、実際には数か月経たずにインスタント発酵して使われている場合がほとんどです。病害虫発生の原因にもなり得るため安全面で問題が残ります。

 また、化学肥料・有機肥料に関わらず、肥料の過剰投与は植物への窒素過多を招きます。窒素は植物の成長に必要ですが、多すぎると硝酸態窒素(硝酸塩)となって、その多くは植物体内に残ります。硝酸態窒素(硝酸塩)は、メトヘモグロビン血症やブルーベビー症候群・糖尿病・腎臓疾患・発がん性物質生成等の原因として人の害になるばかりでなく、地下水の汚染や塩類集積による土地の疲弊と荒野化など環境問題の原因ともなっています。

有機栽培には上記のような課題がありますが、決してすべての有機農業を否定するものではありません。

 安全で美味しいものを食べてもらいたいという想いで、一切農薬を使わずに有機栽培の農産物や加工品を作られている生産者も多くいらっしゃいます。

 有機肥料に関してもその課題点を理解して、動物性の肥料は一切使わずに自家製の無農薬の米ぬか等安全な植物由来の肥料のみ使われている方や、動物性肥料を使っている方でも地元の安全な飼料を与えた家畜の完熟堆肥のみ使用している方、窒素量を把握して必要最小限の有機肥料のみ使用して有機栽培を実践されている方等もいらっしゃいます。また自治体や管理する団体によっては有機栽培の窒素使用量も独自に規制されている所も増えています。

 問題なのは有機JASの規格が曖昧であるがゆえに、お店に並んでいるお米・野菜・果物等の農産物及びその加工品が、無農薬かどうか、肥料はどんなものをどれだけ使っているかが、表示だけでは分からないということです。

「2017.10.31追記」

有機栽培の表示について重大な問題だと思われる点について、下記追記致しました。

それは、有機JASの規制対象となるのは、農産物やその包装、容器だけという点です。 つまり、商品を説明するパンフレット・チラシ広告・インターネット上での表示については、規制の対象にならないということです。 これではホームページで有機栽培と謳っていても、それが本当に有機栽培なのかを判断することはできません。例え本当に有機基準で栽培していても、裏作では化学農薬や化学肥料を使っている可能性も考えられます。これはインターネットによる通信販売が急増している現状において、有機JASそのものの意味を失いかねないほど極めて重大な問題だと当店では考えています。

 

「自然栽培の課題」

 自然栽培の課題としてはやはり、法的な定義がなく体系化もなされていない事から、自然農法という言葉も含めてまだまだあやふやな表現となっている場合が多いということです。

 それぞれの生産者やそれを取り扱っている販売者が、それぞれの方法や表現で語っているため、それぞれ似ているけど少しずつ違うというような非常にふわふわした状況であるとも言い換えられます。農薬や肥料・堆肥の考え方や捉え方も、生産者や取り扱っている販売者によって異なることがあったり、例えば表作では無施肥・無農薬でも、裏作では農薬や肥料を使っているような場合や自然栽培は一部の田畑のみというケースも考えられるため、しっかりとした聞き取りや現場での確認が必要となってきます。

 また、自然栽培の作物が育つのに適した土壌(土)になるまで、数年かかる場合があることも大きな課題です。その期間は、収量や品質が不安定になりやすいことや、出来る作物が基本的に旬の時期に限られてしまうこともあって、自然栽培を実践してみたいが経営面の不安から躊躇されている方も多くいらっしゃるのが現状です(※)。自然栽培を実践されている生産者が、現状まだまだ非常に限られていることから、小売りなど販売の現場で通年自然栽培の農作物を揃えることもまだまだ難しく、いかに自然栽培を普及させるか(いかに構造化・普遍化させるか)は今後の大きな課題であると言えます。 

 そして、これは自然栽培・有機栽培・自然農法いずれにも言える課題ですが、残念ながら自分たちの農法の優位性を主張するにあたって、それ以外の栽培方法全体に問題があるかのような言い方・表現をされている方が少なからず見受けられます(他意はなくても結果的に誤解を与えかねない言い方・表現になっている場合もあります)。 

 当店としての考えになりますが、自然栽培も有機栽培も自然農法もそれぞれの方が、安全でおいしい食品を提供したいという想いをもって必要な情報を公開して生産されている場合、そこに栽培方法での優劣はないものと考えています。

 自然栽培も有機栽培も自然農法もその言葉・表現だけでは伝わらない、分からないことが沢山あるのが現状です。可能な限りの情報を公開し、どのように作られたものであるかを知ってもらった上で、買っていただく方にご判断いただける環境を作ることが最も大切な事だと当店では考えています。そして、これは当店にとってもまだまだ大きな課題です。今後も安心して食べていただけるお店づくりに努めていきます。

 

(※)なお当店では初期の土作りに炭素資材を投入するいわゆる炭素循環農法も、自然栽培を新しくはじめられた生産者の収量確保の面から、初期の土づくりに炭素資材を用いることは可としています。以後も使い続ける場合は、自然栽培とは区別しています。(なお菌糸を使う場合は放射能汚染の心配がないことを大前提としています。)

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